思考ノイズ↵

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浅煎り・中煎りのコーヒー豆は比重が重いので、ゆっくりドリップすると風味が洗練される。

久しぶりに本職(バリスタ)に関することについて記事を書いてみる。

僕がマスターとして一人で切り盛りしているカフェでは『ペーパードリップ』と『エスプレッソ』の2種類の抽出方法を使い分けて提供しているが、今回は家庭でも実践しやすい『ペーパードリップ』について少し技術的な面での思うところを書いていきたいと思う。

 

浅煎り・中煎りのコーヒー豆は比重が重いので、ゆっくりドリップすると風味が洗練される。

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浅煎り・中煎りのコーヒー豆は比重が重いので、ゆっくりドリップすると風味が洗練される。

 

今回書いていく内容は浅煎り豆や中煎り豆などの『酸味が強調されるロースティング』のコーヒーが好きな方向けの記事になる。

おそらく上記に該当する人で自分でドリップを行なったことのある方は『深煎り豆に比べてドリッパー内部が水浸しになる』経験に一度は直面したことがあると思う。

 

そのため、『浅煎り豆は抽出が難しい』という印象があるが、実はその理由に気付ければ案外うまく淹れることが比較的できるようになる。

ぜひ知らなかった人はこの記事を参考にしてほしい。

 

 

話を戻すが、実は中深煎り以上のロースティングで焙煎日が若い新鮮な豆ならほとんどこの状況は発生しない。(ドリッパーが水浸しになる状況)

なぜなら深煎り豆は『軽い』からだ。

コーヒー豆は生豆の時点で乾燥している状態だが、その内部には実はまだ水分が残されており、焙煎によってその水分は飛ぶようになっている。

要するに『焙煎が進めば進むほどコーヒー豆は軽くなる』ということだ。

 

つまり、浅煎り豆はその反対で焙煎時間が深煎り豆に比べて短いためより『重く』なる。そのせいでドリップした際にコーヒーの粉はドリッパー内で水底に沈みやすくなる現象が発生する。

これが浅煎り豆のドリップ難易度をどうして上げているか?

それはコーヒー豆の比重が重ければ重いほどドリップ時に美味しく淹れるための重要要素である『膨らみ』があまり起こらなくなるというところにある。

 

 

ドリップの際の膨らみは『コーヒー豆のガス放出』による膨らみだ。

それによってコーヒー豆がドーム状に形を形成し、雑味をカットするフィルターを形成することでドリップコーヒーは他の抽出方法に比べてより銘柄の風味を洗練させて表現することができるのだ。

 

しかし、浅煎り豆を使うとこのドーム状の天然フィルターを最大限活用することが難しくなる。

そもそもガス放出量が少ない浅煎り豆はドーム形成が控えめで、しっかりとしたフィルター形成がされない。そこで水圧コントロールを誤ってしまうとドームが崩れてしまい、周りからお湯が漏れる事でそれらが雑味として抽出したコーヒーに流れ出てしまう。

コーヒー豆は深煎りより浅煎りになればなるほどガスの放出も緩やかになっていく。

浅煎り豆はそもそも『膨らみづらい』条件が揃ってしまっているので、たとえ焙煎日が若い新鮮な豆を使っても難易度が難しいのは変わらない。

 

 

 

では、解決策の話をする。

個人的にバリスタとしてのドリップ経験を踏まえるとまずは『ドリッパー選び』から注力してほしい。

 

浅煎り豆を扱う際に見てほしいポイントは『ドリッパーの穴』だ。

 

条件としては、『穴が多い(3つ以上)もしくは穴が大きい事』がクリアされていれば問題ない。上記の理由を提示する意味としては、『お湯がスムーズに抜ける事』が非常に大切だからだ。

一番よくないパターンは濃いめに抽出ができる『1つ穴で少し小さめのドリッパー』だ。このようなドリッパーを使うといくら水圧のコントロールをしても時間がかかりすぎたり、水抜けをわざと遅くするように設計している為、比重が重い浅煎り豆を使うとたちまちドリッパー内が水浸しになり、瞬く間に雑味だらけのコーヒーが抽出されてしまう。

 

個人的には『カリタ』のドリッパーや『ハリオ』のドリッパーを使うのが比較的お湯の抜けがいいのでベストだと思う。最近流行っているキーコーヒーの『クリスタルドリッパー』もお湯の抜けが比較的いいのでおすすめだ。

 

 

 

 

次に注意してほしいのは抽出時の『水圧コントロール』だ。

 

浅煎り豆をスッキリいれたいが故に『強めの水圧で短時間で抽出する』という方法も見受けられるが個人的にはこれは失敗率が高くなると思っている。

一番抽出を行なって安定していると思った抽出方法は『出来るだけゆっくり弱い水圧で濃いめに抽出し、その後にお湯で割る』方法だ。

僕は深煎りの豆でもこの手法はよく行う。
(深煎りの場合は風味の為に抽出時のお湯の温度を下げてドリップする。コーヒー自体がぬるくなってしまうのでコーヒーの温度を上げる事を目的に後入れで熱いお湯を足す。)

 

浅煎りの場合は『純粋に雑味を落とさない為に慎重にドリップする結果→弱い水圧でドリップを行う』事を目的にこのような手法を取る。

ドリップという抽出方法自体が時間をかけすぎると雑味が生まれてしまう方法なので、時間をかけても5分までが雑味が発生しない限界と考えてその範囲で時間設定も行うといいかもしれない。

ゆっくりとドリップする分、時間の部分だけ気をつけてドリップすれば、雑味とは無縁のコーヒーを楽しむことができるだろう。

 

浅煎り豆はそもそもがスッキリ淹れても美味しいロースティングなので普段の5分の4くらいの量になったら欲張らずに切り上げてしまおう。
その後お湯で規定量まで足す事でよりクリアな味わいを楽しむことができる。

 

 

ちなみに水圧コントロールがしやすく、ゆっくり淹れる事を想定するなら『注ぎやすく温度が下がりづらいケトル』を選ぶことが大切だ。

僕はホーロー製のコーヒーケトルを2つ愛用している。

深煎り抽出には『ペリカンコーヒーポット』を浅煎り・中煎りには『月兎印コーヒーポット』を使用している。

 

月兎印 スリムポット 0.7L ホワイト

月兎印 スリムポット 0.7L ホワイト

  • メディア: ホーム&キッチン
 

 

あくまでも体感だが、『ペリカンコーヒーポット』の方が温度が下がりづらい。
その為、抽出したコーヒーが緩くなってしまう懸念がある『深煎り』のコーヒー抽出を相性がいいと思っている。

 

反対に『月兎印』はペリカンほど保温性はペリカンほどなくともかなり安定した水圧コントロールが可能だ。(ただし、点滴抽出のような特殊なドリップ手法を用いる場合はペリカンの方が優勢)

浅煎り・中煎り豆はスタートの湯温を低く設定することはほとんどなく一定のスピードでより細くゆっくり抽出できるかが最重要なので、温度よりも『どれだけ安定した水圧コントロールができるか?』に注力すべきだ。そういった意味では『月兎印』は浅煎り・中煎り豆にぴったりなケトルだと言える。

 

 

上記の2つのポイントを踏まえれば基本的に美味しい浅煎り・中煎り豆のドリップコーヒーを楽しむことができるだろう。

ただし、『コーヒー豆が新鮮であること』『お湯の温度が適切であること』など基本的な内容を守った状態でのプラスα事項なので、基本に忠実に抽出を行なって楽しんでいただけると幸いだ。

 

では今回はこの辺で。